相続人が海外在住の場合
当事務所での経験則上、相続人の方が日本に住んでいる場合がほとんどです。
ですが、なかには、「兄弟が海外在住だ」という方もいらっしゃいます。そうした場合はどうしたらよいのでしょうか?
相続人が全員日本に住んでいる場合、相続手続きに必要な書類は大まかに次の通りです(あくまでも遺産分割の話し合いで揉めていない、また海外在住の相続人の居場所が分かっていることが前提となります)。
➀亡くなった方の出生~亡くなるまでの戸籍謄本(※誰が相続人かでもっと必要になる場合あり)
➁相続人全員の現在の戸籍謄本
➂相続人全員の印鑑証明書
➃遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印での押印が必要)
➄各金融機関で用意されている「相続手続き依頼書」
➅亡くなった方の通帳や証書、キャッシュカードなど
➆手続きをされる方の実印
ただ、相続人の誰かが海外在住(日本から転出済み)である場合、上記の「印鑑証明書」の取得できません。
そうした場合、遺産分割協議書へ実印を押印したとしても、印鑑証明書がないため、通常どの金融機関や法務局(不動産名義変更)でも手続きが出来ません。
なので、海外に相続人がいる場合は、一般的には次のような手続きをとります。
海外在住相続人最寄りの在外国日本大使館(若しくは総領事館)で、「サイン証明」および「在留証明」を取得する。
流れとしましては次の通りです。
①相続手続きに必要な戸籍謄本や住民票の取得が終えたら、故人の方の遺産を調べ、どのように遺産を分けるか相続人全員で話し合う。
②話し合いで、どのように遺産を分けるかが決まったら、海外在住の相続人へ「遺産分割協議書」を送る。(メール等で送り、現地でプリントアウトしてもらっても可)
③海外在住相続人は、その遺産分割協議書を持って最寄りの日本大使館(若しくは総領事館)へ行き、大使の面前で遺産分割協議書にサイン(署名)をし、「サイン証明(添付型)」を発行してもらう。
同時に「在留証明」をいただくようにしておきましょう。
サイン証明の見本はこちら ⇒ サイン証明(見本)
在留証明の見本はこちら ⇒ 在留証明(見本)
④③までの手続きが済んだら、日本にいる相続人へ、日本大使館(総領事)で取得した書類を日本の代表相続人(主となって手続きに動いている人)に送る。
⑤日本にいる代表相続人は、その他の相続人から遺産分割協議書へ「署名・捺印」をいただけたら、相続手続きに必要な全ての書類を揃え、手続きをしていく。
いかがでしたでしょうか?日本での遺産分割において、相続人の方が海外在住である場合は、手続きに必要な印鑑証明書の代わりの書類を、その国の日本大使館等で揃えるような形になります。
各大使館HPにおいて、詳しい手続きが掲載されておりますので、「海外に相続人がいる」といった方は、まずはそちらを調べてみるとよいかもしれませんね。
参考までに、在アメリカ、中国、韓国、ベトナム日本大使館のHPを添付します。
在アメリカ日本大使館HP ⇒ https://www.us.emb-japan.go.jp/itpr_ja/shomei-shoumei.html
在中国日本大使館HP ⇒ https://www.cn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/shoumei_shomei.html
在韓国日本大使館HP ⇒ https://www.kr.emb-japan.go.jp/people/ryouzibu/consulate_ichiran.html#u
在ベトナム日本大使館HP ⇒ https://www.vn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/20160921_JP_Ryouji_ShoumeishoShinsei.html
なお、遺産分割協議書の書き方によっては、さらにサイン証明(添付型)をいただく書類が増えてしまう可能性もありますので、ご注意ください。
例えば、遺産分割協議書の内容が、「すべてを4分の1づつ取得する」のような書き方では、銀行所定の用紙へサイン証明(添付型)をいただかなくてはならない可能性もあります。
出来ることであれば、サイン証明(添付型)は遺産分割協議書のみにいただくことを前提に手続きを進めていくことが、海外在住相続人の方の負担を減らすことに繋がります。
ご参考になれば幸いです。